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辰野町の工房「こまくさ」 穴窯を使った年に一度の本焼成

素早くまきをくべる花岡はま子さん。炎の勢いはピークに

素早くまきをくべる花岡はま子さん。炎の勢いはピークに

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 辰野町にある工房「こまくさ」が、ゴールデンウイークも後半に差しかかった5月4日、陶芸の最終工程となる「本焼成(ほんしょうせい)」のピークを迎えた。

裏側からの穴窯の様子。窯内の温度は1200度近くに達する

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 釉薬(ゆうやく)を塗った作品を高温で焼成する本焼成は本焼きとも呼ばれ、温度上昇スピードを的確に管理、設定温度まで適切な時間をかけて上昇させる。焼き物を完成させる重要工程で、特に穴窯では4日以上焼き続ける必要があり、相当な気力と体力を要する。

 5月1日に始まった本焼成は、4日目には穴窯から漏れる炎の勢いも増し窯内の温度は約1200度に。窯の脇を通るだけで汗がにじむほどの熱さになった。

 工房こまくさは、陶芸家夫婦の花岡和一さんとはま子さん(箕輪町大出)が所有する穴窯と灯油窯を有する工房。毎年行われる穴窯を使った窯炊きは年1回実施しており、陶芸仲間や友人によって支えられここまで続いてきたという。

 穴窯は日本最古の歴史を持つ窯で、5世紀に中国から朝鮮を経由して日本に持ち込まれた。登(のぼ)り窯とは違い、たくさんの作品は一度に作れないうえに、手間も労力もかかるアナログ方式。そんな穴窯を和一さんは「特別感が溢(あふ)れる作品が生まれるのが魅力。窯炊きを行う日の天気や温度、季節によって影響を受ける。そんな焼き方だからこそ、作り手がコントロールしきれない偶然を作品に見出すことができる」と話す。

 この日も大勢の友人らが代わる代わる手伝いに訪れた。箕輪町から手伝いにきた50代女性は、慣れた手つきで煙突から見える炎の勢いを見ながらまきをくべるタイミングを計り、4本のまきを3組にして並べ、数分に一度のペースで素早く窯に投入。「先生とはもう20年以上の付き合い。毎年手伝いに来ていて、昨年から窯にまきをくべる『炊き込み』の手伝いができるようになった。1200度近い窯の側はとても熱くて汗が吹き出す」と汗を拭いながら話す。

 はま子さんは「みんなが助けてくれるからこの作業を大変だと感じたことがない」と言う。自らもまきをくべる係を終えたら、すぐにまきを補充するグループに加わり、せっせとまきをトラックから下ろし、ラックに積み上げていく。手伝いに来てくれた仲間を誘導して作業をこなし、水分補給を促し、時折談笑も楽しむ。

 焼き上げた作品を取り出す「窯出し」は今月16日からを予定し、完成作品を鑑賞・購入できる「窯出し展」は併設する展示場で5月31日~6月2日に開催予定。

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