上伊那エリアで4月後半になり、子ヤギの出産ラッシュが終盤を迎えている。
4月4日、箕輪町(木下区)の根橋長夫さん宅に子ヤギ2頭が誕生した。名前は雄のマッシュと雌のマロ。「孫がマシュマロのように白くてふわふわしているから」と名付けたと話す長夫さん。8歳になる母ヤギシロは産後なかなか母乳が出ず困っていたところ、長夫さんの息子がインターネットで検索し、人間用の粉ミルクで代用できることがわかったという。現在2頭の子ヤギは人間用の粉ミルクを飲んで成長している。
今回無事に2頭を出産したシロだが、昨年3月の出産時には、出産した直後にキツネに子ヤギを連れて行かれてしまった経験がある。「しっかりと囲いをしていたが、どこからかすり抜けて侵入したようだ。朝、シロの様子を見に行くと子ヤギの姿が全く見当たらなかった。その時の反省を生かして今年は犬のゲージにシロを移動させて出産させた。ここはハウスの中なので安全」と長夫さん。
妻の君子さんは「おととしは熊が6頭、昨年は熊が2頭出た。シカもよく出るような地域。今年は無事に生まれてきてくれて良かった。子ヤギはもう少し大きくなると脱走してイチゴなど食べてしまう」と話す。
伊那市内にある「産直市場グリーンファーム」(ますみヶ丘)でも3月から4月にかけて、50頭の子ヤギが生まれた。同市場ではヤギのレンタルや販売も行っている。
飼育部主任の小池裕子さんは「除草を一番の目的にヤギをレンタルする人が多いが、最近はテレビの影響でヤギをペットとしてレンタルする人もいる」と話す。「レンタル希望では、兵庫県や神奈川県、群馬県、東京都など県外からのお客さまが増えている。個人もいれば、企業や学校、保育園などからのニーズもある。先日は旅館を経営する方が、旅館を訪れる人にヤギを見て楽しんでもらうためにレンタルをしに訪れた。また、遠出ができない代わりにヤギを数日間レンタルして、お子さまとの思い出作りをされる人もいるなど理由はさまざま」と話す。
「ヤギは漢字で書くと『山に羊』と書くだけあって、山岳に住む動物なので寒さに強い。マイナス10℃でも元気に走り回るが、逆に暑いのが苦手。最近は長野県の夏も暑くなってきている。暑さが厳しい時はミストなどをかけたり、岩塩の塊を置いて塩分補給を行ったりしている。ヤギは秋ごろに発情するので、暖かくなる3月ごろに生まれるように種付けを行う。妊娠期間は約5カ月間」と小池さん。
「畑や田んぼはもちろん、ソーラーパネルの下など機械が入りづらいところにヤギを放し除草する方もおり、エコな除草としてヤギが見直されている。一方でヤギは何でも食べてしまうので毒草などには注意してほしい。スイセンやスズラン、ツツジなどの植物もそうだが、ジャガイモやネギ、ダイズなどにも注意が必要。ネットで検索すれば出てくるので調べてほしい」と呼びかける。「昔はヤギが一般的に飼われていたが、時代の変化とともに飼う人は減っている。一般の方にもヤギが広まってほしい」とも。