里親養育包括支援機関で上伊那フォスタリング機関でもある「こごみのねっこ」(伊那市高遠町西高遠)が12月5日、地域の大人たちがチームとなり子育てをする新たな地域モデル事業の取り組みを始めた。
子どもの居場所「おさんぽ」(伊那市高遠町西高遠)内に里親コーナーを併設
運営は認定NPO法人「フリーキッズ・ヴィレッジ」。県から委託を受け里親支援事業を行う同法人では、上伊那地域における養育里親の愛称を「こごみファミリー」と名付け、家庭の事情で親と暮らせない子どもを自分の家に迎え入れ、一定期間預かる制度を整える。日本では少子化が進むにもかかわらず、児童虐待通告は毎年増え続けており、さまざまな事情で親と離れて暮らす子どもは県内に約600人、そのうち約8割は児童養護施設で暮らすのが現状。上伊那地域には乳児院がないため、保護が必要になった乳幼児は松本市や飯田市など遠方の施設に措置されるケースが多く、伊那市内の里親は9組と里親家庭の数も不足している現状だという。
自身も里親であり、同法人代表を務める宇津孝子さんは「児童虐待が身近に起こっていて、地域に里親、里子がいることを知ってほしい。親が孤立してしまう子育てではなく、地域に頼れる環境を整えたい。里親制度は特殊なものではなく、地域の子育て支援の延長線上にあると感じている」と話す。同法人の平野清香さんは「里親制度は主に3つに分類することができる。将来的に養親となることを前提とした養子縁組里親、一定期間のみ家庭で養育する養育里親、週末や長期休みに数日間子どもを家庭に迎える週末里親がある。日頃から地域のつながりが強まれば、児童虐待を通告される前から家庭をサポートできる。地域からこぼれ落ちてしまう家庭を少しでも減らしたい」と話す。同法人は子どもたちの居場所「みんなの村」(高遠町山室)も運営している。広報担当の常盤諒さんは「今年の5月に伊那市に移住し、みんなの村で里親さん、里子さんを特に区別せずみんなで楽しむ様子を見て驚いた。『里親』と聞くとハードルの高さを感じてしまいがちだが、週末里親などそれぞれのライフスタイルに合わせた関わり方を選択することができる」と話す。
「こごみのねっこ」では運営にかかわる寄付の受け付けも始めており、寄付金は来年度に開設予定の里親支援センター「こごみのねっこ」の拠点となる一軒家に緊急時に乳幼児を受け入れできる部屋を設けるための資金のほか、里親向けの細やかな研修費や広報活動費などに充てるという。
宇津さんは「子どもにとっても、親元を離れるのは命綱が切られるような感覚。最大限の配慮をしたい。例え子どもたちが親元を離れても、地域の子どもとして暮らし、『ただいま』と帰る家があり、『私の家に遊びにおいでよ』と友達を誘えることは、守られるべき当たり前。親と離れて暮らす子どもたちに、たくさんの手が差し伸べられる地域にしたい」と思いを込める。「『こごみのねっこ』の名の通り、根っこで地域がつながっていけば、あちこちでまた新しい『こごみ』が生まれ、『こごみファミリー』が広がっていく。『こごみのねっこ』での取り組みが、全国の家庭養育のモデルなれば」とも。