高遠小学校(伊那市高遠町)で12月6日、地元農家を招いた有機米の出前授業が行われ、5年生の児童が有機栽培の特徴や米づくりの一年について学んだ。
有機栽培について説明する三宅のどかさん(伊那市が有機米給食提供)
伊那市は今年3月に「オーガニックビレッジ宣言」を行い、有機農業の推進を市全体の方針として掲げる。取り組みの一環として、12月のおよそ1カ月間、市内21校の学校給食に地元産の有機米を提供しており、提供量は約6.3トンを予定。出前授業は、児童が作り手と直接触れ合い、有機栽培をより身近に感じてもらおうと企画した。
講師を務めたのは伊那市長谷で有機栽培に取り組む農家の中山幾雄さん。有機栽培では農薬を使わないため、草を抑えるために手間や工夫が必要だと説明。さらに稲の生育について「1粒の籾(もみ)から茎が10本に増え、最終的に約1000粒の籾になる。1粒が1000倍にも増える力を持っている。だから一粒の米を大切に食べてほしい」と語りかけた。
授業では、伊那市の有機給食コーディネーター、三宅のどかさんが有機栽培の概要を紹介した後、中山さんが自身の活動や米づくりの一年をスライドで説明。児童からは「農薬を使わないと大変なのに、どうして有機栽培を続けるのか?」「玄米の方が白米より安いのはなぜ?」「手作業で精米するとどうなるの?」など、関心の高さがうかがえる質問が相次いだ。中山さんは「有機栽培では多様な生き物と共生しながら育てる。植物と土の中の微生物の関係性が面白く、毎年新しい発見があるから続けている」と回答。児童は真剣な表情で聞き入っていた。
5年生は今年、JA指導の下で米づくりを体験している。担任の宮下快先教諭は「子どもたちは米や野菜づくりを通して食べ物を育てる大変さを感じ始めている。農家さんの思いや苦労をより深く知ってほしいと思い、出前授業を取り入れた」と話す。三宅さんは「味だけでは有機と慣行栽培の違いに気づきにくい。作り手に直接会うことで地域の農業に関心を持ち、有機栽培とは何かを考えるきっかけにしてほしい」と期待を寄せた。
授業後には児童から、「知らないことがたくさんあって面白かった」などの声も上がり、日々の食卓の背景をより身近に感じていた。