「ガストロノミーツーリズムの最前線」をテーマにした勉強会が11月28日、生涯学習センター「いなっせ」(伊那市荒井)で開催された。
観光関連や飲食店経営者など事業者中心に満席となった会場の様子(ガストロノミーツーリズム)
講師は、ガストロノミーツーリズムプロデューサーの柏原幸太郎さん。テーマは「その土地でしか味わえない『美食』を求めて」。著書「世界の富裕層は日本で何を食べているのか?」に触れ、伊那谷の可能性についてガストロノミーツーリズムの観点から語った。会場には飲食店や宿を経営する事業者など、ガストロノミーツーリズムに関心が高い約60人が参加した。
講演の中で、「ガストロノミーツーリズムとは食文化を楽しむ観光のこと」と解説する柏原さん。観光庁では、「各地の多様な食文化やそのストーリーの魅力に触れるガストロノミーツーリズムを推進し、宿泊業の付加価値の向上、地域経済の活性化を図るため、地域の食材の積極活用等による食の価値向上に取り組む地域に対して、食の専門家による助言指導、地産地消のためのメニュー・コンテンツ造成等の支援を行う」として推進する。柏原さんは、ビッグマック指数を取り上げ、日本が貧しくなってしまったことに言及した上で、自動車産業に次ぐ第二の輸出産業が観光業であることを具体的な数値と共に示しながら、経済効果の高さを伝えた。また、世界中の旅行者が日本を訪れたい動機に、「『食事がおいしいから』という理由が大きい」とし、特に富裕層は67%が「まだあまり知られていない場所を人気が出る前に見つけたい」という欲求があるという調査結果を示した。若者においてはその傾向がさらに強く、特定のレストランを目的に旅行を計画する人が過半数を超え、うち64%が出発前にレストランに予約を入れていることも分かっているという。
一方、地方への旅を90%の旅行者が望んでいても、10%程度しか実際に訪れることができていないことにも触れた。「1回目の旅行では東京や京都を選び、日本のファンになってもらい、次の旅では地方を訪れてもらえるように動線を整備していくことが重要」と語った。「地方に魅力あるレストランが一軒でもあれば、人はその地を訪れる。それによって周辺に影響が及ぶ。日本の風土の実像は都市よりも地方にあることから、今後も有望」と、富山県南砺市の山の中のフランス料理が味わえるオーベルジュ「レヴォ」や、山形県鶴岡市のイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」を事例に挙げながら伝えた。
主催した箕輪町ガストロノミーツーリズム推進組織検討メンバーで、箕輪町でタイ料理レストラン「GUUUT(グート)」の店主でもある三浦俊幸さんは「この伊那谷という地域を美食のまちとして多くの観光客に訪れてもらえる魅力的な場所にしていけたら、と活動を始めた。この地域に住む子どもたちが大人になったとき、この地でたくさんの選択肢と活躍の場があることを願っている。道を切り開いていくため、一緒に当事者として盛り上げてくれる有志メンバーを募っている」と今後の展望を話す。「勉強会などの開催も含め、今後も活動を継続していく」とも。