
伊那市立長谷小学校(長谷溝口)3年生児童12人が6月23日、孝行猿資料館で民話「孝行猿」について学んだ。講師を務めたのは、14年間にわたり語り部として活動してきた地元在住の高坂英雄さん。
孝行猿は、伊那市長谷地域に伝わる民話で、市の無形民俗文化財にも指定されている。物語は、冬に猟に出た猟師・勘助が親猿を撃ち、いろりにつるして寝ていると、夜中に物音がする。見ると子猿たちが手をいろりで温めては親猿に当てている。目を開かない親猿の体を懸命に温める様子に勘助は心を打たれ、自らの行いを悔いて翌朝、親猿を山に埋葬するというもの。
高坂さんは、親を大切にという教訓だけでなく、猟師として生きる勘助の立場や命を頂くという行為の重み、物事の多面性なども含めて児童らに語りかけた。当時の勘助の生活や、支え合わなければ生きていけない農村の暮らしを話し、思いやりや感謝の気持ちを忘れてはならないと伝えた。児童からは当時の暮らしぶりへの質問や、使っていた道具に対して驚きの声なども出ていた。
同校では毎年3年生が「孝行猿」を題材に学習を行い、劇として発表する。高坂さんは前任者から役割を引き継ぎ、遺跡の環境整備も行いながら14年間語り部として活動してきたが、この日が最後の役割となった。高坂さんは「年齢や体調を考慮し、今回でその役を終えることになった。来年度からは、同地域出身の若手が語り部の後継者としてこの取り組みを引き継いでくれる」という。